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福岡家庭裁判所 平成元年(少)2号 決定

少年 M・S(昭48.12.2生)

主文

少年を初等少年院に送致する。

理由

(非行事実)

本件記録中の少年に関する司法警察員作成の平成元年1月9日付け少年事件送致書記載の犯罪事実と同一であるから、これを引用する。

(適用法令)

刑法176条

(ぐ犯保護事件について不処分の理由)

1  福岡保護観察所長から通告のあったぐ犯事実は少年は、

(1)  昭和63年11月10日午後4時頃福岡市南区○○町の○○ビル1階階段において、A子(小学校3年生)に対して臀部を触るなど猥褻行為を行った(少年法第3条第1項第3号ニ該当)

(2)  同年12月17日午後2時頃同市中央区○○の○○マンションのエレベータ内において、B子(小学校4年生)に対して猥褻行為を行った(少年法第3条第1項第3号ニ該当)ものであり、このままでは将来罪を犯す虞れが極めて大と認められるものである。

というものであり、ぐ犯性としては少年が将来性犯罪を犯すおそれがあるという趣旨と思われる。しかし、前記非行事実として認定した行為(強制わいせつ)自体がぐ犯性の現実化したものであることが明らかであり(しかも、この強制わいせつと前記ぐ犯通告のあった(2)の事実とは同一の事実である。)、このような場合にはぐ犯が犯罪に吸収され、独立して審判に付すべき事由とすることができないので、ぐ犯については少年に対し保護処分をしない。

(処遇理由)

少年は、昭和63年9月に保護観察に付されたのにも拘らず本件強制わいせつ事件を起すなど保護観察の自覚は見られない。また、少年の家庭環境は劣悪で、保護者の指導監督も期待できない。その他、少年の年齢、環境、性格、資質、生活歴等をも合わせて考慮すると、この際少年を初等少年院に収容保護して矯正教育を施すことが必要かつ相当である。

よって、少年法24条1項3号、少年審判規則37条1項、少年院法2条2項を適用して、主文のとおり決定する。

(裁判官 林秀文)

〔参考1〕通告書

福保観発第4号

通告書

昭和63年12月23日

福岡家庭裁判所 殿

福岡保護観察所長 ○○

下記の者は、少年法第24条第1項第1号の保護処分により、当保護観察所において保護観察中のところ、新たに同法第3条第1項第3号に掲げる事由があると認められるので、犯罪者予防更生法第42条第1項の規定により通告する。

氏名

年齢

M・S 昭和48年12月2日生

本籍

愛知県春日井市○○町××番地

住居

福岡市中央区○○×丁目×-××○○マンション××号

保護者

氏名

年齢

M・T 明・大・〈昭〉17年1月1日生

住居

福岡市中央区○○×丁目×-××○○マンション××号

本人の職業

中学生

保護者の職業

無職

決定裁判所

福岡家庭裁判所

決定の日

昭和63年9月7日

保護観察の経過及び成績の推移

別紙1のとおり

通告の理由

別紙2のとおり

必要とする保護処分及びその期間

少年院送致相当

参考事項

本人にかかる質問調書(甲)1通

別紙1

保護観察の経過及び成績の推移

1 本人は昭和63年9月7日、福岡家庭裁判所で軽犯罪法違反により保護観察に付する旨の決定を受け、同日実母M・O子とともに当庁に出頭し、主任官から保護観察の期間、保護観察の心得、保護観察期間中遵守しなければならない事項の説示を受け、これを遵守する旨誓約した。

2 本人の資質、家庭環境に問題があると認められたので、担当者においては本人との接触を密にはかるなど重点的に処遇していた。

3 昭和63年11月10日午後4時頃福岡市南区○○町の○○ビル1階階段において福岡市南区○○町×の××のA子(○○小学校3年)に対して臀部を触るなど猥褻行為を行った。

4 昭和63年11月24日(当初の呼出し予定は11月19日、本人の都合で変更)当庁に呼出して事実を調査するとともに、今後かかる再犯を起こさないよう厳に指導するとともに、この様な再犯を繰り返せば家庭裁判所で少年院送致など更に重い処分を受けることになる旨説示して本人の注意を喚起した。

5 この件により処遇強化の必要性が認められたので、昭和63年11月15日、保護観察分類処遇をAに分類変更して処遇の充実・強化を決定した。

6 昭和63年12月17日午後2時頃、福岡市中央区○○の○○マンションのエレベータ内において、福岡市中央区○○×丁目×-××-××B子(○○小学校4年)に対して猥褻行為を行った。

7 昭和63年12月23日、本人を出頭させ、本人に対し質問調査を行い事実を確認した。

8 保護観察官及び担当保護司の指導にも拘らず、保護観察開始後社会的に保護すべき年少女子に猥褻行為を繰り返し、保護観察の総合成績は不良である。

別紙2

通告の理由

本人は、

1 昭和63年11月10日午後4時頃福岡市南区○○町の○○ビル1階階段において、福岡市南区○○町×の××A子(○○小学校3年)に対して臀部を触るなど猥褻行為を行った。(少年法第3条第1項第3号ニ該当)

2 昭和63年12月27日午後2時頃福岡市中央区○○の○○マンションのエレベータ内において、福岡市中央区○○×丁目×-××-××B子(○○小学校4年)に対して猥褻行為を行った。

(少年法第3条第1項第3号ニ該当)

ものであり、このままでは将来罪を犯す虞れが極めて大と認められるものである。

〔参考2〕平成元年1月9日付け少年事件送致書記載の犯罪事実

被疑者M・Sは、昭和63年12月17日午後2時25分ごろ、福岡市中央区○○×丁目×番××号、○○マンションエレベーター内において、B子(10歳、昭和53年12月17日生)に対して、同女が13歳未満であることを知りながら、突然後ろから同女を抱きしめ「静かにしろ」などといって暴行を加え、同女の意に反して着衣の上から乳房を手でもんだり、さらに同女のパンティの中に手を差し入れ手指で陰部等を弄び、もって強いてわいせつの行為をしたものである。

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